ほ乳類の多くはヒトのような円形、ネコのような縦長のスリット状、そして横長の楕円形のような瞳孔を持っています。ウシやウマ、ヤギ、ヒツジなどの有蹄類(ゆうているい)、クジラやカバなどに横長の瞳孔がみられます。横長の瞳孔は網膜の錐体細胞が多い昼行性の動物の目に多いといわれています。
横長の瞳孔である動物の多くは草原に住む草食動物だといえます。ウマを例にとって考えると、身体は大きくても肉食動物に狙われやすい動物だといえます。草食動物にとって、自分の身を守るためにはまずいち早く敵を認識する必要があります。ウマの目はほぼ真横についていますが、これも広い草原を見渡すためで、ウマの視野は正面、側面、後方が見えるといわれています。同様に、瞳孔においても、草を食べつつ肉食動物の姿を発見しやすいように横長の瞳孔になっているのだそうです。明るい場所で瞳孔を細めても広い視野を保てるように、横長の楕円形型になるのだとも考えられています。
また、ウマやヒツジ、ラクダなどの横長の瞳孔を持つ動物には、虹彩やその上部分に黒いかたまりがあります。瞳孔のカタチには影響を与えていませんが、中でもウマやラクダはこの黒いかたまりがヒダ状になっていて、独特な瞳孔のカタチに見えます。この黒いかたまりは強い日差しを遮るためのものだといわれています。
引用文献
岩田誠:神経進歩,29(5),704,1985
遠藤秀紀:ウシの動物学,pp.44-47,東京大学出版会(東京),2001
近藤誠司:ウマの動物学,pp.57-63,東京大学出版会(東京),2001
Rochon-Duvingneaud A:Les Yeux et la Vision des Vertebres, Masson et Cie, 1943