Santenの主力製品である点眼薬の製造過程で、地球環境保全に関するどのような取り組みが行われているか、ご存じでしょうか。目の領域に特化したSantenでは、高品質な製品を追求するため、国内外で年間計約52万トンの水を使用していますが、そのうち製品となる水の量はごくわずかです。
そこで、点眼薬製造の全ての過程で生じる水資源の使用量をいかに削減できるか、長年にわたり取り組んでいます。
2021年5月に、地球環境保全が人類共通の最重要課題の一つであるとの認識のもと、社会的責務を果たしながら持続的な成長を支える事業基盤を強固にするため、2050年に向けた環境ビジョン「Santen Vision for the Earth 2050」を策定しました。それに基づき、事業を行うすべての国・地域で、脱炭素社会の実現に向けて製品の製造過程における「気候変動対策」と「環境負荷低減」の2分野に取り組んでいます。
その中でも今回は、点眼薬の製造過程で欠かせない「水」と「エネルギー」の使用量削減に関する取り組みについて、ご紹介します。

「命」とも言える水をどう再利用するか

Santenは、医療用・一般用の点眼薬を国内外の工場で年間約4億本を製造*1しています。Santenでは、「水は点眼薬製造にとって命」であり、「限りある資源を有効に使う」という意識が社内で浸透しています。特に、点眼薬は人の身体に直接投与されるため、原料水はもちろんタンク等の洗浄水に至るまで、医療品の中でも特に厳しい品質管理が求められる「注射用水」に匹敵するレベルの品質を追求しています。これは、Santenとして高品質な製品を患者さんや生活者に届けたいという思いからくるものです。

Santenは今日、国内外で年間計約52万トンの水を使用し、最終的に製品となる水の量は限定的です。例えば年間約2.5億本の製品を製造する能登工場では、製品となる水の量は総使用量の約0.4%にすぎません。工場で使われるほとんどの水は、点眼薬の原料水となる高純度な水を作る過程や、製品の調合・充填における洗浄や冷却などに使われ、最終的に工場用水として排水されます。
これらの排水を再利用して、水使用量を削減できないか。この新たな挑戦に対し社内では、様々な検討や議論が重ねられており、国内外で様々なプロジェクトが始動しています。

日本では、能登工場で2022年5月に、ろ過器の排水配管を新たなものへと交換し、排水を再利用できるようにしました。これにより年間約7千トンの水使用量を削減できる見込みです。また同工場では、点眼薬の製造に使用されている冷却用装置の水を再利用する検討も進んでいます。これが実現すれば、年間の水使用量をさらに約3万トン削減できる見込みです。

中国の蘇州工場では、国の規制に基づき、水をリサイクルする設備が導入されており、すでに90%以上の水を再利用しています。また、建設中の蘇州新工場は、設計や建設から設備の導入といった全段階に、日本の生産エンジニアが加わり、日本で培ってきたノウハウを生かしながら現地企業と協業して、「環境にやさしい工場」の建設・運営に向けた技術開発に取り組んでいます。

*1  
5ml換算

Santenの環境負荷低減について詳しくはこちら>

工場の使用エネルギーの転換・削減で、脱炭素化を目指す

点眼薬の製造には、工場で使用するエネルギー源も欠かせません。電気は主に空調設備と生産設備の稼働に、A重油*2とガスは製造用水の蒸留工程や加温、空調の温湿度調節などに使われています。
例えば、製造環境やクリーンルーム(無菌室)の清浄度維持のために、24時間空調設備を稼働させたり、高純度水の汚染を防ぐために熱エネルギーを使用して水を高温循環させたり、製造・充填設備を蒸気滅菌したりと、あらゆる過程で多くのエネルギーが使用されています。

Santenは、工場・施設のエネルギー源の転換や二酸化炭素(CO2)排出量の削減を通して、脱炭素社会の実現に貢献しており、工場の設備更新の際には、費用対効果を見極めながら最新技術を活用した効率の良い設備を導入しています。

例えば能登工場では、冷水製造に必要な蒸気吸収式冷凍機の更新において、よりエネルギー消費効率(COP)が高いインバータターボ冷凍機を導入することで、大幅な省エネと化石燃料から電気へのエネルギー転換を図って環境負荷を低減し、年間の省エネ効果として原油換算値で約900㎘のA重油使用量の削減(約30%減)を達成しました。

滋賀プロダクトサプライセンター(PSC)では、1棟と2棟にある冷水設備それぞれについて、電気とガスの併用化に取り組みました。まず、老朽化した2棟の冷凍機を更新する際に、エネルギー源をそれまでのガスから電気(ヒートポンプ方式)へと変えることにしました。電気はガスと比べて、エネルギー消費効率(COP)が約4倍と高く、CO2排出量も少ないからです。さらに、水の使用効率も向上したため余った冷水は1棟の冷水系統と連通送水し、従来のガス冷凍機稼働を抑制するとともに故障時のバックアップ体制も構築しました。これにより、CO2排出量を360t/年(約5%減)、水使用量2万㎥/年(約20%減)の削減を達成しました。

これはSantenの工場としては初めて、また他でもあまり例を見ない取り組みで、設計段階から電力会社と緊密に連携して、工事が進められました。約1年をかけて冷凍機の電化と連通・ガス併用化に成功した結果、滋賀PSCは「電力使用の合理化と電力の有効利用により、低炭素社会実現に寄与した」として、近畿電力利用合理化委員会から2019年度の委員長表彰を受けました。
また、2022年1月から日本国内の工場・研究所の購入電力すべてを再生可能エネルギーに切り替えたことなどにより、2021年度のCO2排出量は約3万トンと、基準年度である2019年度と比べ13.7%の減少を実現しました。

*2
重質の石油製品のひとつ

一人ひとりが取り組む、地球環境への貢献

滋賀PSCの冷水設備の電力化・余剰冷水活用化更新活動で中心的な役割を担った、滋賀工場設備の担当者は、次のように話します。
「日々の業務の中で、無駄が無いか、改善できるところはないかと常に意識し、各拠点の垣根を超えてみんなでアイディアを持ち寄り、様々なことに挑戦しています。生産現場では改善提案制度を導入しており、地球環境保全につながるアイディアも含めて、社員から毎年4千件を超える改善提案があります。実際にエネルギー減や費用削減効果がわかると、『やったぞ』という実感が沸き、さらなるモチベーションにつながっています。会社や地球環境への貢献を感じられることも、喜びのひとつです」

「カーボンニュートラル工場」の実現に向けた社内タスクフォースチームのリーダーを務める、グローバル製造統括部の担当者も、次のように付け加えました。「脱炭素化や水資源削減を目指して議論を重ねながら取り組んでいる活動が、将来・未来の地球環境保全に必ずつながること、そしてそれが次世代へと永きにわたり引き継がれる活動であるという信念を持ち、一人ひとりが取り組んでいます。より良いソリューションを選択できるよう、技術スタッフ自らが学び経験を積み重ねているだけでなく、オン・ザ・ジョブ・トレーニングを通じた人材育成や技術継承をおこなっていることも、Santenの強みであると考えています」

 

現場スタッフの課題意識を原点に環境問題に取り組む

日本のノウハウを中国チームに共有

能登工場の製造用水設備

Santenは地球環境保全のために、今後も様々なアイディアをきめ細やかに積み重ね、国内外の事業活動に関わるあらゆる資源の削減・代替に取り組んでいきます。
Santenの気候変動対策について詳しくはこちら>

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