緑内障は世界に約7,600万人の方が患い*1、日本人の失明原因第1位の疾患です。
Santenは、1981年に緑内障治療薬を発売して以来、緑内障における製品・サービスのラインアップを拡充しながら、私たちの貢献を疾患の早期発見・早期治療の啓発から治療継続の促進まで、治療プロセスの全体へと広げてきました。
この特集では、患者さんや医療従事者のニーズに対してプラスαの価値提供に取り組んできた日本事業のチャレンジをご紹介します。

*1 World report on vision. Geneva: World Health Organization; 2019. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO

患者さんと医師とともに、治療継続の課題に取り組む

緑内障は、少しずつ視野が欠けていく病気です。薬や手術で眼圧を下げることで進行を遅らせることはできますが、生涯にわたって治療が続きます。症状の進行を抑えるには用法・用量を遵守した点眼の継続が欠かせません。

また、点眼治療は患者さん自らが行う治療であるため、日々の生活の中で患者さんができるだけ不安や負担を感じずに治療できることも重要です。それにもかかわらず、緑内障の初期段階では自覚症状がないため、薬の副作用や点眼のわずらわしさ、通院の負担感などによって、治療を中断する患者さんもいます。

当社の日本事業では、これらの治療上の課題解決を目指し、製品の価値に対する市場の理解を深めると同時に、患者さんの治療継続率を高めることを目的に、医療従事者向けのコミュニケーションツールの提供を行っています。この根底には、緑内障治療にかかわるすべてのステークホルダーが患者さん視点で考える状況を作り出すことで、治療継続を促進して緑内障患者さんの視野を守りたいという日本事業の信念があります。

日本事業・眼科事業部・緑内障チーム・マネージャーに当社の緑内障患者さんへの取り組みについて聞きました。

日本の緑内障治療では、医師が眼圧や定期的な視野検査等を基準に治療効果を評価のうえ治療方針を決定し、患者さんは医師の指示通りに治療を行うのが一般的です。しかし、Santenが日本で一般生活者に対して行った調査では、70%以上の回答者が、もし緑内障と診断されることがあれば、治療開始の際に治療方針の検討に関わることを望んでいると示す結果が得られました。これにより患者さんにおいても、治療方針にも関心を持ち、医師への信頼感や治療への納得感が得られることで治療や通院の継続意欲が高まる可能性があると考えられます。また、海外の研究からも、薬剤の副作用や治療に対する不満が、患者さんの視野生存率の低下に大きく関係していることが明らかになっています。

そこで私たちは、患者さんが納得して治療に積極的に取り組める環境をサポートするために、2019年に医療従事者向けのコミュニケーションツールを開発しました。このツールは、緑内障と診断された患者さんに対して医師が疾患や治療薬について説明する際に用いる資材です。患者さんが緑内障について正しく理解し、その治療方針に深く関心を持ち、納得して前向きに治療に参画することで、通院や点眼の継続につなげることを目指しています。このツールを用いることで、医師があらためて患者さんのニーズに気付くきっかけにもなり、治療継続率の向上にもつながっています。実際に、多くの医師や医療スタッフから感謝の声が届いているほか、緑内障専門医論文にも取り上げられるなど、着実な成果が出ています。

現在、眼科事業部ではこのツールの他、2017年に開発した治療継続を促進するツールも用いて緑内障治療のプロモーションを展開しています。忙しい医療の現場に新たなプロセスを定着させるのは容易なことではありませんが、MR*2の継続的なコミュニケーションと情報提供活動が、医療従事者の共感を高め、緑内障治療に対する患者さんの意識・行動の変容につながってきています。

緑内障治療における治療継続の課題は、日本以外の国や地域にも共通しているものと思われます。また緑内障に限らず他の疾患においても、未対応の現場ニーズは沢山あるはずです。人々のHappiness with Visionのために、今後も製品・サービスに磨きをかけ、より多くのニーズに対応しながら、事業の枠等を越えた価値提供にもチャレンジしていきたいと考えています。

*2 Medical Representativeの略。医療従事者を訪問し、医療学術情報を提供する製薬会社の医薬情報担当者。

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