「これまで事業規模の拡大を最優先に取り組んできた一方で、決して順風満帆だったわけではなく、一部の市場では事業や製品供給を中止せざるを得ない苦渋の決断もありました。
ステークホルダーから選ばれるパートナーになることで、これまで以上に眼科医療の発展に貢献し、アジア地域のより良い眼科医療と持続的な事業成長の実現を目指していきたいと考えています。Santenに対する医療関係者の期待も変化し、眼科医療においてなくてはならない存在になってきたと実感しています」
Santenのアジア事業は、この20年間で、大きな成長を遂げてきました。
2010年代以降、韓国での事業拡大に加えて、東南アジア各国でも現地法人の設立と自社販売体制の強化を図り、売上は過去10年で約10倍に増加。2023年度は287億円、Santen全体の9%を占めるまでに成長しました。ここ3年間の年平均成長率は約20%を誇り、アジアの中核市場において、眼科用医薬品シェアNo.1(※1)の地位を築いています。
今回は、国/地域によって多様な課題やニーズを抱えるアジアにおける、Santenのこれまでの成長と今後の中・長期的な目標や、患者さん貢献に向けた思いをご紹介します。
アジアは各国・地域で規制や医療制度が異なり、眼科医療関係者が直面する課題や患者さんのニーズも様々です。
例えば、韓国やシンガポールは、全土で医療のインフラが整備されている一方で、タイやベトナムをはじめとする東南アジア諸国は、眼科医や検査技師などの医療従事者不足により、都市部と地方とでは医療水準が異なるなど、適切な治療が行き届いていないのが現状です。また、国・地域によって疾患領域別割合も異なり、韓国ではドライアイが約4割を占める一方、タイでは緑内障とドライアイ、ベトナムではドライアイに次いで抗感染症薬の割合が高いなど状況が異なります。
これまでアジア事業では、各国・地域のニーズに対応したきめ細やかな戦略を基盤に、部門を超えた連携と、患者さんの治療・アイケア製品の価値最大化を追求することで、力強い売上成長を実現してきました。
2024年4月にアジア事業統括に就任した吉田智行は、アジア事業のさらなる飛躍に向けて次のように話します。
執行役員 アジア事業統括
吉田 智行
「これまで事業規模の拡大を最優先に取り組んできた一方で、決して順風満帆だったわけではなく、一部の市場では事業や製品供給を中止せざるを得ない苦渋の決断もありました。
ステークホルダーから選ばれるパートナーになることで、これまで以上に眼科医療の発展に貢献し、アジア地域のより良い眼科医療と持続的な事業成長の実現を目指していきたいと考えています。Santenに対する医療関係者の期待も変化し、眼科医療においてなくてはならない存在になってきたと実感しています」
吉田は新卒でSantenに入社し、3年間、日本でMRとして活動。そこで得た知識や考え方は、創業期から成長期にあるアジア事業における医療関係者および地域眼科コミュニティとの信頼構築、社内の組織作りに役立ったといいます。
特に重要視するのは、患者さん、眼科医療関係者、Santenの「3者Win(Triple win)」の考え方であり、これは、自社の事業成長を推進すると同時に、眼科医療現場の課題を解決し、患者さんに貢献することを意味します。「これら全てを実現することを目指し、アジア事業における各組織のリーダー達と活動の精査を進め、自分たちが優先すべき課題や注力すべき取り組みの見極めと、活動のブラッシュアップを図ってきました。チームのメンバーもアジアの眼科医療におけるSantenの責任の重要性に気付き始め、より影響力のある成果を創出するためには、『自分たちの活動はどうあるべきか』という議論が活発化しています」と吉田は言います。
「『3者Win』の考え方や、患者さんへの貢献を追求する姿勢は、Santenらしさそのものであり、他社と差別化されたSantenならではの活動につながると考えています。
過去には、ベトナムの眼科医が自身の患者さんの治療に悩みを抱えていることを知り、現地の眼科学会との協働による眼科医の学習機会の促進や、日本事業と連携した日本の眼科医からのスキルトランスファーの支援を行いました。これに対して、ある眼科医は涙を流して喜んでくれました。医薬品メーカーが親身に自身の課題解決を支援してくれたことに感激され、Santenに対して絶対的な信頼を寄せていただくきっかけとなりました」
人材の育成への期待と組織力の強化に向け、吉田は次のように語ります。
「アジアは複数の国・地域で構成され、事業が成長過程にあることから、メンバーにも様々な機会を提供することができます。例えば、自ら仕組みやプロセスを作るなど、事業成長にダイナミックに貢献することを楽しめる環境があります。また、多様な民族的・文化的背景を有する人材が集まっているアジア事業は、複数の国・地域で構成されているため、互いの異なる背景や価値観を理解し、尊重し合うことから始め、チームで協力・連携して各国・地域の眼科医療における固有の課題に対応しています」
近年、アジア、特に東南アジアでは経済成長とともに人々の健康意識が高まり、目の健康への関心も増しています。これに伴い、眼科医療の需要が拡大し、診断や治療の機会も増えています。また、セルフメディケーションの需要が高まり、薬局などでの医薬品販売も多様化しています。アジア事業においてはこれらの変化を好機と捉え、アジア市場での事業拡大を図っています。
「長年眼科にコミットしてきたSantenだからこそ有するナレッジや強みを活用し、地域ニーズに即した『3者Win』の活動をアジアチーム一丸となって積み重ねることで、アジアのより良い眼科医療を実現していきたいです」と吉田は意気込みます。