Santenは眼科領域での高い専門性を礎に、製品やサービスを通じて幅広い治療の選択肢を提供し続けることで、患者さんや眼科医療現場のアンメットニーズに応えています。現在、70以上の製品ポートフォリオで幅広い眼科疾患を網羅し、60を超える世界の多くの国・地域に製品を提供しています。

その製品ポートフォリオを支える、新薬開発の基盤となる疾患戦略の策定・実行を担っている組織が、Santenの「眼科イノベーションセンター(Ophthalmic Innovation Center:以下OIC)」です。OICは、幅広い業界・業種から製品候補を調査・発掘して、その成果を臨床へとつなげ、最新の技術や候補化合物を患者コミュニティに橋渡ししています。今回は、目の不具合を抱える患者さんに治療の機会の提供を目指す、OICのビジョンやチャレンジについて紹介します。

眼科疾患ソリューションの研究開発にたずさわる「頭脳集団」

OICは、米国・日本・アジアを中心に活動基盤を置き、世界中の最新技術を多角的に研究・分析しています。様々な目の病変に苦しむ患者さんの幅広いニーズに応えるため、治療薬に関する広範な研究やコンセプト実証を行い、Santenが目指す「Happiness with Vision」の実現に向け取り組んでいます。

OICの大きな役割の1つが、疾患イノベーション戦略の策定と実行です。今後10年とその先を見据えた長期的な観点から、取り組むべき眼科疾患対応の方向性や優先度を決める、Santenの「頭脳」としての役割を担っています。また、現在関心の高い分野における調査に加え、医薬品候補となる化合物の探索や、近視といったSantenにとって新たな領域に関する治療法の開発にも注力しています。

疾患によっては、臨床的有効性を示す指標の確立が困難な場合もあるため、OICは症状を改善・緩和する治療法を開発するための基礎研究にも取り組んでおり、疾患の有無や、進行状態を示す目安となるバイオマーカーを探索するために、多くのツールが導入されています。

「企業内ベンチャー組織」として、将来に向けた「医療の種」を育てる

 

眼科イノベーションセンター長を務めるレザ・ハックは、次のように話します。

「OICの最重要ミッションは、世界中の患者さん一人ひとりの幸福な人生の実現のために、その目の不具合を解決し、眼科疾患を治すイノベーションにつながる可能性を最大化することです。加えて、Santenの持続的な成長と患者さんへの貢献につながるような製品や技術の拡充を目指しています。そのためには、事業部門をはじめ様々な部門と密にコミュニケーションを取って患者さんや医療現場のニーズを広く深く汲み取ること、また社外の研究機関などとの連携によって最新の研究や技術を知ることが、とても重要になってきます」

OICは現在、患者さんと医療現場からより切実に求められているニーズを調査・分析し、幅広い眼科病態の治療や症状をターゲットに、治療や症状改善に向けたイノベーション創出に向け戦略的に活動しています。

特に、眼科疾患の中でも世界で最も罹患者数が多いとされる近視については、罹患率の高いアジア地域で、シンガポールの国立研究所であるシンガポールアイリサーチインスティテュート(SERI)とタッグを組んだ共同研究を中心に、積極的に取り組んできました。

執行役員
眼科イノベーションセンター長
レザ・ハック

Santenが取り組むべき社会課題としての「近視」

Santenは今年2月に、SERIと共同開発を行っている近視の進行抑制治療を目的とする点眼剤「STN1012700 / DE-127(アトロピン硫酸塩水和物点眼液、以下STN1012700)」の、日本での製造販売承認を申請しました。「STN1012700の開発は、アジアを始めとして世界的に患者数が増加傾向にある近視に注目したことがきっかけでした」と、ハックは説明します。

近視は、眼球の形が前後軸に沿って細長くなり、目の中に入る光線のピントが合わなくなって、モノがぼやけて見えるようになる症状です。強度近視の患者さんは、失明に至る合併症のリスクが高いことが報告されています(※1)。世界保健機関(WHO)の調査によると、近視と診断された人は世界26億人にのぼり、そのうち3億1,200万人が19歳以下となっています(※2)。別の調査では、患者数は2030年には世界人口の39.9%に、2050年には49.8%に達すると予想されています(※3)。

近視に関する研究と創薬におけるOICの役割について、ハックは次のように話します。

「近視は、進行性で不可逆的な疾患で、眼科疾患の中でも特にその対策が喫緊のニーズとなっています。特に、近視と診断される子どもの数はここ数年で急激に増加しています。近視を患うすべての子どもたちの健康問題を解決するために、近視の治療法を見出すことは重要な課題であり、社会全体における緊要のニーズに応えることでもあります。いまや近視はより広範な社会問題であり、眼科に特化したSantenとして、取り組むべき社会課題と考えました。OICによる研究が、STN1012700という目に見える形で患者さんへの具体的な貢献へとつながっていくことを、とても嬉しく思っています。私たちは、あらゆる年齢層の人々のニーズに関心を持っており、今回の開発は、疾患戦略リーダーとしてのOICの目的を分かりやすく示した好例だと思います」

「失敗は成功のもと。失敗から学び、前進することが重要」

OICが取り組むような初期研究が、最終的に新薬として成功する確率は3万分の1程度ともいわれ、一朝一夕にはいかないのが現実です。しかし、あらゆる手段を駆使して新しいことに挑戦し続けない限り、患者さんや医療現場への最大限の貢献を果たすことはできません。また、そのような取り組みを通じて、製薬会社としての持続的な成長と拡大も成し遂げることができると考えます。だからこそハックは、「リスクを取って前進しよう。賢く失敗して学びを得よう」と、絶えずチームの研究者たちを鼓舞していると言います。

ハックはまた、OICの将来について次のように語ります。

「私にとって、新しい発見や研究が、日々仕事に取り組むモチベーションになっています。研究者の育成には時間がかかりますが、新しいことに取り組むことを厭わない志を持ち、科学とビジネスの両方の視点を忘れず、将来のSantenをけん引していくような人材を増やしていきたいと思っています。患者さんのために、たくさん悩み考え、あるときは勇気をもって決断ができるような次世代の研究者の育成が、非常に重要だと考えています」

OICはSERI以外にも、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)やハーバード大学など、世界中の研究機関や、ペプチドリーム株式会社などの企業とも共同研究や情報交換を積極的に進め、世界中の患者さんのアンメットニーズに対応するため、イノベーションの創出に取り組んでいます。

ハックは、「お互いの知恵やスキルの融合によって眼科医療の発展につながる研究開発の可能性を広げることができるだけでなく、外部の知見や技術、スキルに触れたOICのメンバーが、研究者としてさらなる成長を遂げられると信じています」と、外部連携を通じた人材の育成にも期待を寄せています。

世界の眼科医療への貢献に向けて

ハックは、今後の意気込みを次のように話します。

「私はこれまで数社のグローバルヘルスケア企業で眼科研究を統括してきましたが、実際に臨床現場で眼科医としても、数えきれないほどの患者さんを診てきました。そのなかで、治療によって見える世界を維持できた、あるいは取り戻した患者さんたちが見せた笑顔が今でも忘れられず、モチベーションになっています。臨床医として、一人ひとりの患者さんに向き合うこともやりがいがありましたが、企業に属して世界の眼科医療業界の全体を見渡せる環境に身を置き、より多くの患者さんへの貢献に向けて研究開発を推進することは、とても挑戦しがいがあります」

「視力の維持または回復が可能な治療を切望する患者さんは、常にいます。眼科医薬品業界はここ数年で大きく変化しており、眼科に特化し、研究から製品開発・製造・販売まで社内で一貫して取り組んでいるのは、グローバル企業の中でもSantenだけといって過言ではありません。目に不具合を抱える、世界中の患者さんに貢献したいという思いに突き動かされた私たちの活動が、これからの世界の眼科医療に大きく貢献できると確信しています」

  1. Morgan IG, Ohno-Matsui K, Saw SM. Myopia. Lancet 2012;379(9827):1739-48
  2. WHO “World report on vision” 2019年10月8日
    https://www.who.int/publications/i/item/9789241516570
  3. Holden BA, Fricke TR, Wilson DA, Jong M, Naidoo KS, Sankaridurg P, et al. Global prevalence of myopia and high myopia and temporal trends from 2000 through 2050. Ophthalmology 2016;123(5):1036-42
関連情報はこちら

近視の進行抑制治療を目的とする点眼剤 STN1012700 / DE-127(アトロピン硫酸塩水和物点眼液)の日本における製造販売承認を申請
https://www.santen.com/ja/news/2024/2024_1/20240228

Santen目の情報ポータル「近視とは」
https://www.santen.com/jp/healthcare/eye/library/myopia