医薬品におけるライフサイクルマネジメント(LCM)とは、既存薬の製品価値を高めるため、適応される疾患の拡大や剤形の追加、有効性や安全性などの付加価値向上の実現に向けて、継続的な改良を重ねていくことを示します。
Santenが掲げる「Happiness with Vision」の実現において、より多くの患者さんに適切な治療を届けるために、新薬の開発だけではなく、既存薬のライフサイクルマネジメントは必要不可欠な取り組みだと考えています。

今回、抗アレルギー点眼剤のLCM製品である眼科用クリームの日本での開発の舞台裏を通じて、SantenのLCM製品の開発にかける思いをご紹介します。

目指すのは「かゆみのない世界」

アレルギー性結膜炎は、目の表面に花粉などのアレルゲン(アレルギー反応を引き起こす物質)が付着して、結膜に炎症を起こす疾患です。数多くの患者さんが、強い目のかゆみや充血などの症状によるQuality of Life (生活の質:QOL)の低下に悩んでおり、治療には抗アレルギー点眼薬が主に使われます。

日本における従来の治療では、かゆみが発症してから目薬を使ってかゆみを抑える方法が一般的でした。こうしたなか、Santenは、最適なアレルギー治療は何か、患者さんのQOLを守るためにどのような世界を目指すべきなのかを追求した結果、かゆみの発生を阻止する「かゆみのない世界」というコンセプトに辿り着きました。繰り返すかゆみが、患者さんの”自分らしい生活”や”楽しい時間”を損うこともあります。だからこそ症状が出ないように対処することが大事だと考えたのです。

まず、このコンセプトの賛同者を増やすことが最初のカギとなると考えた、眼科領域マーケティング第一グループの佐野は次のように話します。

 
眼科事業部 眼科領域マーケティング 第一グループ 前眼部チーム 佐野 裕介

眼科事業部 眼科領域マーケティング
第一グループ 前眼部チーム
佐野 裕介

「目のアレルギー症状は視力低下や失明に直結しにくいこともあり、治療上の課題を理解していただきづらい疾患です。
そこで私たちは、まず医療従事者の方に協力を仰ぎながら、かゆみがないときと比較して、かゆみが生じたときに患者さんのQOLが低下することを示すデータの収集に着手しました。
データが明らかになるにつれ、多くの眼科医にプロアクティブ点眼(目のかゆみの発生頻度減少を目指し、発症期間中はかゆみの有無にかかわらず用法を遵守した点眼を行う)の有用性を実感してもらえるようになり、Santenのコンセプトへの賛同が得られるようになってきました。また、患者さん向けの眼科医監修アプリ「かゆみダス」(※1)の展開といった、さまざまな取り組みを経て、眼科医や患者さんのアレルギー治療に対する意識が高まりつつあると感じました」

患者さんの実態から気づいた、新たな剤形の必要性

アレルギー性結膜炎について、患者さんや医師へのヒアリング、学術論文等から明らかになったのは、患者さんの中にはかゆみを感じたときに点眼する方、日中は仕事や学業があるため点眼できないという方、身体の不自由な方や小児など点眼動作がうまくできない方もいらっしゃるということでした。薬剤の効果を適切に得てもらうためには、正しい用法・用量を守っての使用が重要です。Santenとしては抗アレルギー点眼薬においては、既に点眼回数を低減したLCM製品を開発し、患者さんにお届けしてきましたが、さらに多くの患者さんにも扱いやすい剤形のものが必要だと痛感し、新たなるLCM開発への着手となったのです。

多数の候補から「クリーム剤」を選択

剤形の発案から開発までをリードした製剤開発グループの西村は次のように話します。

 

「点眼薬という剤形にこだわらずLCM開発を進めることとなり、当初は、さまざまな剤形が候補に挙がりました。
まず、最適な剤形を選択するために、医師や患者さんへニーズ調査や使用感に関するヒアリングなどに着手し、その上で、安全性や利便性、開発の成功確度など、さまざまな観点から臨床開発や薬事、マーケティング部門などあらゆる部門の社員たちが何度も議論を重ね、検討を進めました。最終的には、患者さんが扱いやすく身体への直接的な負担が低いと考えられたクリーム剤を選定しました。

一方、Santenにとって初となるクリーム剤の開発は、試行錯誤の連続でした。

製品開発本部 製剤開発グループ
西村 豊実

開発にあたっては眼科領域に特化した私たちの知見をいかしつつ、皮膚科など必要な専門知識を有するパートナー企業と連携しながら製剤設計を実施しました。苦労も多かった反面、新しいことにチャレンジする面白さもありました。また、計画していた臨床試験の結果が出たときには、安堵すると同時に、クリーム剤の今後の潜在的な可能性にもワクワクしました。試験デザインによっては開発計画に遅れが生じる可能性もありましたが、プロジェクトメンバーの『患者さんのためになんとかして早くこの製品を世に出したい』という強い思いと知恵を結集し、規制当局と交渉しながら開発を進めました」

Santenのミッションは、眼科領域における専門性と患者さん視点から創出される製品やサービスを通じて、目の病気の予防や診断、治療において今まで提供されていない重要な価値を患者さんや社会に提供し続けることです。SantenのLCM開発においては、研究開発やマーケティングの部門など、日ごろから医療従事者や患者さんのニーズの理解に努める社員が一丸となって、患者さんへの提供価値を追求しています。一人でも多くの患者さんが幸せで豊かな人生を過ごすことができる未来を創り出すため、そして世界中の人々が「見る」を通じた幸せを実感できる社会の実現に向けて、全力を尽くしています。

  1. 眼科医監修アプリ「かゆみダス」
    花粉症による目のかゆみへの対策をサポートするスマホアプリです。日々の気象予測から、かゆみなど目の症状の注意レベルや対策に関する情報を提供するとともに、”プロアクティブ点眼”(かゆみを感じる前の点眼)をサポートする点眼通知機能などを実装しています。
    https://www.santen.com/jp/healthcare/eye/library/allergic_conjunctivitis/kayumidas
「目のかゆみ」に対する詳しい情報はこちら

https://www.santen.com/jp/healthcare/eye/selfcheck/itchy_eye

「アレルギー性結膜炎治療に使える眼科用クリーム」の詳しい情報はこちら