目の病気やトラブルに悩む世界中の患者さんのアンメットニーズに応えたいという思いのもと、Santenは「目の健康」を支えるため、日々、研究開発に取り組んでいます。
その中枢となる奈良研究開発センターは、新しい治療法が必要とされている疾患も含めた眼科領域全般を対象に研究開発を担っており、医薬品の創製に向けて努力を積み重ねています。
今回は、世界中の患者さんの「目の健康」と眼科医療の発展を支え続ける奈良研究開発センターについてご紹介します。

日本有数のサイエンスシティに立地する奈良研究開発センター

奈良研究開発センターは、日本有数のサイエンスシティである奈良県・生駒市にあり、1996年に設立されました。建物外観は、土塀調の落ち着いたブラウンを基調とし、奈良という歴史ある地域に調和させるとともに、「古くからの伝統や文化を大切にしていく思い」を表現しています。その一方、ガラスとアルミニウムによる近未来的なデザインの建物とエントランスホールは「新たな未来に向かう姿勢」を表すと同時に「眼球のカーブ」をモチーフにデザインされています。

現在、約150名の科学者と技術者が在籍しており、研究管理室、協力会社の方々なども含め、約200名が研究開発の業務に従事しています。働く人々の能力の発揮やコミュニケーション促進のため、建物内部には、広い踊り場を設けたスキップフロア構造が取り入れられ、自由闊達に意見を交わせる環境が整えられています。

 

土塀調の落ち着いたブラウンと新たな未来に向かう姿勢と、眼球を意識したカーブが特徴の奈良研究開発センター外観

スキップフロア構造の広い踊り場は社員のコミュニケーションの場となっています

Santenの創薬研究、非臨床試験、製剤開発をすべて集約して担う

奈良研究開発センターが開設した当初は、自社創薬のスタート地点となる化合物の合成やスクリーニングという機能も持っていました。その後グローバルに研究開発拠点を拡大するなか、多様化する世界の医療ニーズに対応する製品をタイムリーに創出していく使命に立ち返り、それぞれが担うべき機能とグローバルでの研究開発の体制を再構築してきました。現在、奈良研究開発センターにはSanten社内の創薬研究、非臨床試験、製剤開発機能等すべてが集約されており、グローバルおよび世界各地域での製品開発に必要な、有効性や安全性の評価、製剤、製品の品質設計などの様々な役割が、高い基準で着実に、かつ、適時に遂行されています。

薬理・安全性評価、製剤開発など様々なアプローチから患者さんや医療関係者に貢献

奈良研究開発センターの主要な機能としては、開発候補化合物の薬理効果を評価し、ヒトにおける有効性や用法・用量の推定などを行う「薬理評価」、安全性の評価や副作用発現のリスク予見などを行う「毒性・病理評価」、有効性・安全性情報と薬物濃度の関係性を確認する「薬物動態評価」が挙げられます。また、CMC(Chemistry, Manufacturing and Control:医薬品製造における最適な生産工程の開発)においても、重要な機能を果たしています。処方開発では、開発候補化合物の化学的特性を見極め、点眼剤に含めるその他の成分の検討・検証、品質・安全性に優れた点眼剤の設計も行います。さらに、製品の規格設定や品質を担保するための試験方法の開発、安定した商業生産を保つための製造プロセス開発、製造サイトへの技術移管なども担っています。

これらの機能を果たすべく、奈良研究開発センターの実験室は眼科評価を行いやすいよう設計され、種々の眼科機器が配置されています。研究開発の注力分野に合わせて設備や機器を更新しながら、それらを活用する科学者や技術者たちの知見や技術が脈々と継承されています。
例えば、安全性を評価するプロセスのひとつである病理標本の作製では、眼組織のミクロン単位の切片作製や画像撮影の高い技術を有し、社外の医療関係者からも高く評価されています。また、薬理評価においては、迅速な薬効評価の実施と信頼性の高いデータの創出についても、多くの企業から評価を得ており、化合物や技術の眼科応用を打診されています。

 

点眼剤の処方設計

「点眼容器は目に最も近いところで使用される“道具”」、患者さんの使いやすさに徹底的にこだわる

Santenは、過去から現在に至るまで、「点眼容器は、目に最も近いところで使用される“道具”である」という発想から、点眼容器を外部業者から仕入れるのではなく、その研究から製造までを自社で手掛けています。安全性の確保とともに、製品のパフォーマンスを最大に引き出すには、患者さんの使用する場面や瞬間を想定し、薬剤の成分や液性と、点眼容器の素材や形状とをうまく組み合わせることが重要です。そのため、奈良研究開発センターでは薬剤と点眼容器の素材との相性の検討や点眼容器の設計など、容器開発にも積極的に関与しています。

2002年に誕生した「ディンプルボトル」は、毎日点眼が必要な患者さんのために、使いやすさと表示の見やすさを追求したデザインを実現し、2008年にグッドデザイン賞を受賞しました。

新しい治療法が必要とされている眼疾患領域にもチャレンジ―世界中の患者さんの「目の健康」を支えていく

Santenは、緑内障、ドライアイ、アレルギーを中心とした基盤事業領域の製品の開発・提供を続ける一方、新しい治療法が必要とされている眼科領域、例えば近視、老視、眼瞼下垂といった眼疾患も対象とし、研究開発を進めています。
奈良研究開発センターの統括を担う山田和人はSantenの研究開発の今後のミッションや新たなチャレンジについて、こう話します。
「われわれは近い将来に近視、老視、眼瞼下垂などの新領域にて新たな価値貢献の機会創出を目指すとともに、医療アクセスの向上にも注力しています。世界中の患者さんの目の健康を支えていくため、奈良研究開発センターから新たなソリューションを提供し、医療の新たな選択肢を広げることに寄与してまいります。」

 

奈良研究開発センターのスタッフと談笑する製品研究統括部長の山田和人(右から2人目)

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