私たちSantenが携わる眼科医療をとりまく現在の状況と未来の展望について、お届けします。今回のテーマは「眼科医療におけるイノベーション」です。眼科医療において過去に起こったイノベーション、今後イノベーションを起こしうる新技術についてご紹介します。

イノベーションとは何か?

皆さんは、イノベーションという言葉を聞いてどのようなことをイメージするでしょうか。イノベーションという言葉には「技術革新」「革新」「刷新」「新機軸」などの意味があり、一般的に「技術によって新しい世界を創造する」といった意味合いで用いられています。

私たちはイノベーションによって便利になっていく世界の中で生きています。例えば、外出先で電話をかけるためには公衆電話を探さなければならなかった時代から、個人の携帯電話でどこからでも電話がかけられるようになり、現在では通話だけでなくパソコンやデジタルカメラ、音楽プレーヤーなどの機能もスマートフォンひとつで持ち歩けるようになりました。

イノベーションには「創造的破壊(Creative Destruction)」という側面もあります。これは、新しい商品や機能などが消費者にとってより望ましいベネフィットを提供する場合、新たな市場が生まれたり、既存のビジネスに破壊をもたらしたりするなど、一種の「パラダイムシフト」が起こる可能性があることを意味します。

フィルムカメラからデジタルカメラへ、デジタルカメラの機能がスマートフォンに搭載されたことで、私たちも撮影した画像や動画を簡単に友人や家族等にシェアできるようになりました。その一方で、それまで優位性のあった業界や企業は、こうした時代の変化に適合するため、さらなる技術革新や業態変革を図りながら成長を続けています。

私たちSantenが携わっている眼科医療の分野においても、これまで度々大きな技術革新が起こっており、そう遠くない将来にも破壊的なイノベーションが生まれるかもしれません。過去に眼科医療の世界で起きたイノベーションと、今後のイノベーションに期待が寄せられる新しい技術をご紹介します。

これまで眼科医療に起きたイノベーション

眼内レンズを用いた白内障手術

白内障治療には、古くから眼球を針で突いて水晶体を硝子体側に落としたり、水晶体を取り出したりする手術が行われていましたが、苦痛やリスクが大きいだけでなく、元のような見え方にはなりませんでした。眼内レンズの発明、侵襲性の低い安全な手術方法の開発により、現在では、手術を受けて視力を回復する患者さんも多くいます。

眼底三次元画像解析(OCT)検査

従来の眼底検査では網膜の表面しか見ることができませんでした。しかしOCTによって網膜の断面を可視化できるようになったことで、加齢黄斑変性や網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症などの早期発見、緑内障のより正確な経過観察が可能になり、抗VEGF剤の開発にもつながりました。

眼科医療に関わる最新技術

再生医療

iPS細胞を用いて加齢黄斑変性に対する網膜色素上皮細胞の移植や、網膜色素変性に対する網膜組織移植、角膜上皮細胞移植などの研究が進められており、臨床への応用が待たれています。

遺伝子治療

網膜色素変性への遺伝子治療の研究が進んでいます。遺伝性疾患であり、現在は有効な治療法のない網膜色素変性が、再生医療や遺伝子治療の進歩により、治療可能な疾患に変わる可能性が期待されています。

3Dバイオプリンティング

細胞を3次元に配置して生体に近い組織構造を再現する技術です。血管や神経が含まれない比較的単純な組織として、角膜の再生医療に向けた研究が進んでいます。自家細胞を用いた人工角膜が実用化されれば、角膜移植におけるドナー不足や拒絶反応の問題が解決される可能性が期待されています。

人工網膜

網膜色素変性で失明した患者さんが光を取り戻すツールとして研究が進んでいます。眼鏡にとりつけた小型カメラから送られる画像データをもとに、網膜の近くに埋め込んだ電極から刺激を送る電子デバイスや、薄い膜状の人工網膜を眼底に埋め込むタイプなどがあります。

電子デバイスによる視覚障がいサポートツール

AI技術を活用したサポートツールも進化しています。たとえば情報を音声で伝える軽量のAIカメラ、スマートフォンの読み上げツール、電子白杖などの歩行サポートツールは、視覚障がい者の生活を一変させつつあります。

患者さんのQOL向上につながるイノベーション

近年ヘルスケアにおいて重視されることは、エビデンスに基づく治療効果や視力や視野などの「機能」だけでなく、自身の生活スタイルに合わせた快適さなどにも広がってきています。眼科に特化したSantenは、世界中の技術や組織・人材をつなぎ、社会にイノベーションをもたらすことで、「見る」を通じた人々の幸せを実現したいと考えています。