2024年8月6日

翼状片の新しい治療薬として開発中のCBT-001についてSantenとCloudbreak社がライセンス契約を締結

参天製薬株式会社(本社:大阪市、以下Santen)はこのほど、臨床段階の眼科用医薬品に注力する医薬品企業Cloudbreak Pharma Inc. (本社:米・カリフォルニア、以下Cloudbreak社)と、同社が翼状片を適応症として独自に開発しているマルチキナーゼ阻害剤CBT-001について、日本、韓国および、ベトナム、タイ、マレーシア、フィリピン、シンガポール、インドネシアの東南アジア諸国におけるライセンス契約を締結しましたので、お知らせします。本契約に基づき、Cloudbreak社はSantenに対し、対象地域における製剤の開発・製造・販売に関する権利を許諾します。

CBT-001は、翼状片の治療を目的として、Cloudbreak社が開発しているニンテダニブ乳化点眼剤です。ニンテダニブは、マルチキナーゼ阻害剤として、VEGF(血管内皮増殖因子:vascular endothelial growth factor)受容体および、PDGF(血小板由来成長因子:platelet derived growth factor)受容体、FGF(線維芽細胞増殖因子:fibroblast growth factor)受容体に作用し、血管新生および線維化を抑制します。現在、米国にて前期第Ⅱ相試験が完了し、米国、オーストラリア、ニュージーランド、中国、インド、で大規模な多施設における国際共同第Ⅲ相臨床試験が実施されており、CBT-001は、翼状片の病変の進行を点眼剤で抑制するという新たな治療選択肢を医療従事者および患者さんに提供できる可能性が期待されています。

翼状片は、結膜から発生し角膜表面に進展する非悪性の線維血管組織増殖です。翼状片はその浸潤性増殖傾向と再発傾向から良性腫瘍とみなされることが多く、転移はありません。翼状片は非悪性腫瘍ではありますが、充血、刺激、疼痛、異物感などの重大な眼の症状を引き起こすことがあり、患者さんのQuality of Life(QOL:生活の質)に影響を及ぼします。現在、翼状片を適応とした治療薬はなく、眼の充血や異物感に対する対症療法として人工涙液や、炎症の強い症例ではステロイドの点眼薬などを使用する場合もありますが、これらの点眼液は翼状片そのものの改善につながるものではなく、また、ステロイドの長期間の使用については安全性上の課題があります。視軸への侵襲があり視力に影響を及ぼす場合は、翼状片の外科的切除を行い、充血が持続する場合にも同様の処置が行われることがあります。翼状片に対し、現在さまざまな術式が選択されていますが、どの手法にも再発する傾向があり1、翼状片手術における課題とされています。一方で、重度になるまでは手術は行わず、経過観察が主な手段になっているのが現状です。発症の原因は不明ですが、本疾患の発症と進行においては、紫外線が密接に関わっていると考えられています2。翼状片患者さんは低緯度地域に多く、世界では人口の約10%が罹患しており3、日本には400万人前後の患者さんがいると推定されています4。また、有病率は、日本においては40歳以上の4%5、韓国は3.8%6、ベトナム・マレーシア・フィリピン・タイは40歳以上の10.1%と推定されます7

Santenの取締役 チーフ オペレーティング オフィサーの中島 理恵​は次のように述べています。「これまで、翼状片は重症化してから手術をして切除する治療法が一般的でしたが、今回、本疾患に対し、点眼剤で治療できる可能性があるCBT-001について、Cloudbreak社と、日本およびアジア地域での開発・上市に向け協働できることを大変嬉しく思います。CBT-001を当社の新疾患領域の開発パイプラインに加え、眼科に特化したスペシャリティ・カンパニーとしての知見と経験を活かすことで、翼状片患者さんのアンメットニーズに応える新たな治療選択肢を一日でも早くお届けできるよう努めてまいります。」

Cloudbreak社の創業者であり最高経営責任者(CEO)であるジンソン・ニー(Jinsong Ni)博士は、次のように述べています。「品質、革新性、患者さんの目の健康へのコミットメントで知られているSantenと提携できることを嬉しく思います。両社が共に描くビジョンと専門知識を結集することで、この有望な疾患修飾治療(disease modifying therapy:DMT)を、日本および世界中の翼状片患者さんに迅速に提供する、という私たちの使命が大きく前進することを期待しています。」

なお、契約条件に基づき、Cloudbreak社は最大9,100万米ドルの契約一時金とマイルストンを受け取ることになります。また、同社は製品の売上に応じて2桁台の料率でロイヤルティを受け取る権利があります。

  • 疾患の原因となっている要素を標的として作用し、疾患の発症や進行を抑制する治療法

<参考資料>

  1. Tanaka et al, Journal of Japanese Ophthalmology 115:386-390, 2011
  2. Modenese et al, Int J Environ Res Public Health 15(1):37 (2018)
  3. Liu L et al. Geographical prevalence and risk factors for pterygium: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open 2013;3:e003787. doi:10.1136/bmjopen-2013-003787
  4. 疫学調査(40歳以上の4.4%(福島県南会津町、北緯37度)、50歳以上の7.2%(石川県門前町、北緯37度))から概算
  5. Tano et al, Acta Ophthalmol 91(3):e232-6, 2013
  6. Rim TH et al, PLOS One 12(3) e0171954, 2017
  7. Ang M et al, Ophthalmology 119(8):1509e15, 2012

Cloudbreak社について
Cloudbreak社は、新規かつ差別化された治療法の開発に専念するイノベーション主導型の臨床ステージの眼科バイオテクノロジー企業です。当社は、2015年に米国カリフォルニア州アーバインに本社を設立し、その後、中国本土および香港でも事業を展開しています。当社は、世界的なアンメット・メディカル・ニーズに対応するファースト・イン・クラスおよびベスト・イン・クラスの眼科治療薬の自社創薬、開発、商業化に取り組んでいます。主要な前眼部および後眼部疾患をカバーする8つの新薬候補からなる広範かつ革新的なパイプラインを確立しており、4つの臨床段階の新薬候補と4つの前臨床段階の新薬候補があります。私たちの使命は、人々が「薬を通じて人生をより良く見る」ことを支援することです。
詳細については、当社ホームページhttps://cloudbreakpharma.com/をご参照ください。

Santenについて
Santenは、眼科領域に特化したスペシャリティ・カンパニーとして、世界中の患者さんや生活者、医療関係者の皆さまへの価値ある製品やサービスの提供を通じ、人々の「Happiness with Vision」の実現に貢献することを目指しています。創業以来、「天機に参与する」という基本理念の下、130年以上にわたり人々の目の健康維持・増進を追求してきました。現在、眼科領域における医薬品の研究開発、製造、販売・マーケティング活動をグローバルに展開し、世界60以上の国・地域で約5,000万人の人々の目の健康をサポートしています。私たちのミッションは、眼科領域における専門性と患者さん視点から創出される製品やサービスを通じて、目の病気の予防や診断、治療において今まで提供されていない重要な価値を患者さんや社会に提供し続けることです。一人でも多くの患者さんが幸せで豊かな人生を過ごすことができる未来を創り出すため、世界中の人々が「見る」を通じた幸せを実感できる社会の実現に向けて全力を尽くしています。
詳細については、当社ホームページhttps://www.santen.com/jaをご参照ください。

-本件に関するお問い合わせ先-
参天製薬株式会社 コーポレート コミュニケーション
Email: communication@santen.com

Cloudbreak Pharma Inc.
Email: HongKongPR@cloudbreakpharma.com
Tel +852-2882-6582

当内容は2024年8月6日に発表した英文プレスリリースの翻訳版です。また、中国語(繁体字と簡体字)においてもプレスリリースが発表されていますが、正式言語は英語であるため、表現や内容につきましては英文プレスリリースが優先されます。
英文プレスリリースは、右記URLよりご参照ください。https://www.santen.com/en