地域の能力開発

Santenは、事業分野である眼科領域における医療アクセス向上に取り組み、眼の疾患や不具合に起因する世界中の人々の社会的・経済的な機会損失を削減することを目指します。

途上国における若手眼科医師育成

当社は、ICO (International Council of Ophthalmology、以下ICO)の3か月のフェローシッププログラムを支援しています。このプログラムは、経済的発展途上国の若手眼科医師を3か月間先進国へ派遣し、眼科に関する知識・技術の向上を図るものです。当社は、年間3人分のフェローシップ費用の寄付を継続的に行っています。若手眼科医師育成を支援することで、医療未充足エリアの医療水準向上に貢献していきます。
2024年4月現在、マレーシア、タイ、エジプト、トルコ、メキシコ、インドの眼科医がそれぞれアメリカやフィンランド、ネパール、イギリスなどでの研修を終えました。新型コロナウィルス感染症の影響で延期となっているケースもありますが、新たにマレーシアの若手眼科医がインドでの研修を予定しています。

ベトナム、インドネシアにおける看護師の育成プログラムの開発

 

当社は、眼科医療従事者に対する教育において世界をリードする存在として国際的に広く認知されているSingapore National Eye Centre(SNEC)と戦略的パートナーシップを締結し、オンライン・オフライン融合型の革新的な教育プログラムの共同開発と国際展開を進めています。本プログラムでは医師以外の医療従事者のスキルを向上させ、医療行為の一部を適切に委譲し、限られた医療人材を効率的に活用することで、東南アジア地域における眼科医療アクセスの向上を目指します。
東南アジア地域におけるはじめての取り組みとして、ベトナム保健省傘下の中央病院であり、ハノイ医科大学の臨床研修施設の位置付けにあるVietnam National Eye Hospital(VNEH)とのパートナーシップ契約に基づき、育成拠点の構築に向けた活動を開始しました。具体的に、2022年6月には当社の支援のもと、SNECは指導者育成プログラムをVNEHに提供することで、計10名の指導者(眼科医5名、眼科看護師5名)を育成しました。また、現地のニーズに沿ったベトナム語の教育プログラムを開発するとともに、2022年8月から10月にかけてSNECとVNEHはパイロットプログラムを実施しました。これにより、VNEHにおいて23名の受講生に教育プログラムを提供するとともに、当地における本プログラムの提供価値などのコンセプトを確認しました。2023年9月から12月には、初めてとなるフルプログラムを開講し、ベトナム全土から40名の受講生が参加しました。
この取り組みは他の地域へも展開しています。インドネシアにおいても、インドネシア大学の附属病院であるDr. Cipto Mangunkusumo National Central Public Hospital(RSCM)およびIndonesian Clinical Training and Education Center(ICTEC)とパートナーシップ契約を締結の上、トレーナー育成および教育プログラムを現地化しました。初めてとなるフルプログラムを2023年11月から12月に開講し、インドネシア全土から9名の受講生が参加しました。

キックオフセレモニーの様子

セレモニーの様子

途上国における眼科医不足解消

 

当社は、世界最大の眼科基金であるICO Foundationが、途上国での眼科医不足解消のために実施している、眼科医の育成に携わる人を教育するプログラム「Teaching the Teachers」に2012年から継続して寄付を実施し、活動を支援してきました。

「Teaching the Teachers」プログラムの様子 (写真提供:ICO Foundation)

途上国におけるデジタルヘルスプログラムを用いた啓発

 

当社は、国際連合の情報およびコミュニケーションテクノロジーの専門機関である国際電気通信連合(International Telecommunication Union、本部:スイス・ジュネーブ、以下ITU)と2020年1月より4年間のパートナーシップを締結し、ITUと世界保健機関(World Health Organization、本部:スイス・ジュネーブ)との取り組みである眼科領域における Be He@lthy, Be Mobile(BHBM)をサポートしてきました。
BHBMは各国政府と協力して、人々の健康的なライフスタイルの実現に向け、携帯電話やデジタルデバイスを用いた非感染性疾患の予防と管理の啓発を行っています。世界のほぼ全ての人々(約97%)は、携帯電話の電波が届く範囲で生活していると推測されていて、SMS(ショートメッセージサービス)やデジタルデバイスのアプリを通じたエンドユーザーへの健康に関する情報の配信など、デジタルヘルスのサービス内容および対象地域が拡大しています。何百万人もの人々がこのプログラムを利用しており、利用者の健康へ貢献しています。
この取り組みの一環として、病気に対する認識を高め、良いアイケア行動を促進することを目的とした近視に関する教育キャンペーンを実施、モニタリングするためのガイダンスなどが含まれているMyopiaEdというツールキットを2022年3月に発行しました。

アジアにおけるぶどう膜炎領域での眼科医教育プログラム支援

 

当社は、インドのHyderabad Eye Instituteが運営するL V Prasad Eye Instituteへの寄付を通じて、特にアジアのぶどう膜炎領域における眼科研修医や開業医を含めた眼科医のオンライン教育プログラムを支援しています。初年度の教育プログラムは2021年7月から約1年にわたり実施され、下記活動が行われました。

  1. ぶどう膜炎の各特定分野のリーダー参加によるクラス運営
  2. ぶどう膜炎領域で100時間以上のアカデミックエンゲージメント
  3. 毎月の分科会、基調講演、症例検討会、相互交流会
  4. 国際的に主要なぶどう膜炎センターとの毎月の合同症例検討会議
  5. 開業眼科医とアカデミアのぶどう膜炎スペシャリストの情報交換インターフェース

初年度のプログラムでは、インド国外からの35人を含む140人近くの眼科医が、継続的に参加してきました。研修生からは、次のようなコメントをいただいています。

  • とても参考になりました。自分が知らないことを気付かされ、基本教材からやり直す必要性を認識しました。
  • 素晴らしい内容でした。私がこのコースに参加することを勧めてくれた友人に感謝します。

ぶどう膜炎オンライン教育の様子

2年目の教育プログラムは2023年1月から始まり、12月に終了しました。インド以外から参加の15人を含む約130人がプログラムに登録し、1年目のプログラム履修者数名も再登録しました。授業は毎月5時間、3つのセッションに分けて行われ、毎月最後のセッションは、アメリカ、ブラジル、オーストラリアの協力パートナーのいずれかと合同で行いました。
多くの研修生から、臨床実践を一変させる有意義なものだったとフィードバックがあり、取り組みの重要性を認識しています。
当社は寄付を通じて継続的にこの活動を支援しています。

日本における研究者の育成

 

奈良研究開発センターは、2005年に国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学との連携講座として開設された「機能高分子科学研究室」の運営を担当しています。専門分野に精通した当社の従業員が客員教授、准教授、連携研究員として研究者をめざす学生を指導し、これまでに博士課程前期修了者15人、博士課程後期修了者2人を輩出しました。

研究室内での実験の様子

中国における眼科医育成

 

Santenは、中国の眼科医療の発展に尽力してきました。中国における眼科医の能力開発と専門性向上のため、1966年にSanten奨学金制度を設立しました。長年にわたり、眼科医療従事者育成のための多様な学術的支援プログラムを提供しています。これまでの奨学金の総額は2020年末までに21百万人民元(約4億円)に上ります。
さらに、当社は「緑内障標準化センター設立プロジェクト」を通じて、北京白求恩公益基金会と協働で緑内障診断と治療の標準化を推進してきました。このことは、多くの緑内障患者さんに恩恵をもたらすだけでなく、中国における診断と治療のレベルの向上につながっています。

2020年Santen奨学金制度覚書締結式
緑内障標準化センター設立プロジェクト第II期